企業の新入社員教育の方法を激変させた規制緩和の荒波
昭和50年代に入って、それまで様々な参入規制の行われていた国内産業に順次規制緩和の波が押し寄せてきたところ、同業者間のシェア競争に限らず、実力をつけてきた新興国内企業から押し寄せる安い製品輸入が増えてきて、多くの国内企業は販売競争や売り上げ不振に巻き込まれて体力を失いました。こうして、事業の縮小や事業所の閉鎖等に追い込まれて経営の悪化する企業が一気に増えてきました。
昭和50年代からのこの経営環境の激変が起こるまで多くの企業では新入社員を採用する方針を決めると、カリキュラムを作成し、業務スケジュールを事前に決めて新入社員教育体制を整備していました。こうして、新入社員が入社してくると時間をかけてカリキュラムに沿った教育、研修を行い、次いで、事業所の現場へ配属後、部署ごとの実務研修を行ってからOJTに入り、ステップを踏みながら新入社員に一本立ちの道を進んでもらう方法が実施されていたはずです。
しかしながら、規制緩和が始まると企業を取り巻く経営環境が変化し、経営体力を急速に消耗した企業の中には不振事業の縮小や事業所の閉鎖等に対処するため人員削減に踏み切り、中高齢社員の希望退職募集を行う企業が続出しました。経営状態の悪化した企業では新入社員を採用しても教育担当者を配属する余裕がなくなりました。そこで、新入社員は入社式もそこそこに各職場に配属されて先輩社員からOJTで実務を習得していかざるを得なくなりました。また、必要な知識の習得については社外で開催される各種研修セミナー等へ自主的に参加して実力をつける時代になっています。